最近、競馬のスプリント路線、スプリンターについて調べたり思うことを書き並べてみました。長くなってしまったので3回に分けて記事にしようと思います。以前に書いた、「距離の価値観」「速い馬が勝つ競馬」と関連していますのでよかったらそちらも御覧ください。
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日本の競馬はクラシックを頂点としており、また古馬の王道路線も、天皇賞、JC、有馬記念などの中長距離にもっとも比重を置いている。それゆえ、日本の(一流の)競走馬はまずは多くの場合中距離路線(2000~2400m)を目指す。距離が持たない馬、または中距離で敗れた馬がマイル路線(1600~1800m)を歩み、またマイルでも長い馬が、スプリント路線(1000~1400m)に行くことになることが多い。短距離戦に出走するにあたって、「気性がイッちゃてる」「距離が持たない」というネガティブな理由をよく聞く。日本の競馬の距離の価値観ははっきりしていて
中距離 > マイル > スプリント
となっている。スプリント路線も最近は整備されて重賞レースも増えてきた。とはいえ、やっぱり裏方なのである。
日本で普通に競馬ファンをしていたら、短距離馬を軽視してしまうのは当たり前である。キングヘイローやアドマイヤマックスのように菊花賞に出走したような馬が、短距離ばかりを使われていた馬を差し置いて、中距離路線の残念賞みたいに高松宮記念を勝ってしまうのをみると致し方ないことである。この手の馬は大抵、先行馬ではなく差し馬となる。残念ながら真のスプリンターではなくなんちゃってスプリンターと言える。
もっともこのスプリント路線の地位が高くない傾向は程度の差はあっても世界中で見られる。欧州もスプリント路線はクラシックのギニー路線で通用しなかった馬が歩むことが多い。ドバイミーティングでも、ブリーダーズカップでも、香港国際競争でも、一番賞金の高いレースは2000mのものであり、スプリントは高くない。短距離戦が盛んなイメージがあるアメリカでさえ、条件戦は短距離が多数を占めていても、スプリントのG1はブリーダーズカップスプリントが初なのである。現在ではアメリカ全部で8つほどのスプリントG1があるらしいが、約100あるG1レースに占める割合は小さい。短距離王国と言われてスプリントG1が多数あるオーストラリアでも、高額賞金レースは2040mのコックスプレートや3200mのメルボルンカップであってスプリント戦ではない。
最近、日本のスプリント路線はレベルが低いと言われている。中距離こぼれの馬が高松宮記念を勝ってしまい、かつてのサクラバクシンオーのような生粋のスプリンターと言えるチャンピオンは長いこと登場せず、スプリンターズSではサイレントウィットネス(香港)、テイクオーバーターゲット(豪州)、昨年のウルトラファンタジー(香港)らが日本馬を寄せ付けず快勝し、逆にチャンピオンクラスの日本馬が多数遠征した暮れの香港スプリントでは未だに入着すらないからである。
最近の日本のスプリンターの低迷は、根本的には日本の競馬は中距離中心ということがあるのだが、アグネスワールド、シーキングザパール、タイキシャトルのような強いマル外が減少したことも大きい。
今年のダービーで出走馬全てのサンデーの孫というほど中距離路線を席巻しているサンデー系だが、スプリント路線ではだいぶ様子は変わる。今年の高松宮記念は勝ったのはサンデー孫のキンシャサノキセキだが、サンデーの血を引く馬は5頭しか出走していなかった。象徴的なのが直線1000mのアイビスサマーダッシュで、設立からの11回のうちサンデーの血を引く馬が連対したことは一度もない。今年は掲示板にすら載っていない。ちなみに掲示板に載った5頭は全てミスプロの血を引いた馬であった。血統の多彩さでいうとサンデーばかりの中距離よりもさまざまな血統が見られる短距離の方が面白い。もっとも短距離中心のオーストラリアでは血統はデインヒル天国となっているので、日本の短距離の血統の多彩さは中距離中心がゆえと言えるかもしれない。
逆に、香港やその馬の仕入れ先であるオーストラリアがなぜ短距離で強いのか。日本では多くの生産者が2400mのダービーを中心とした中距離のクラシックを目標に生産しているのに対して、オーストラリアでは世界最高賞金の2歳戦である1200mのゴールデンスリッパーSを目指して生産しているからであると思われる。オーストラリアの3歳で2400mのダービーはあるのだが、ゴールデンスリッパーSの方は地位は上のようである。ほとんど全ての馬がまずは1200mのゴールデンスリッパーSを目指す。3歳でそのままスプリント路線を歩む道、ダービーやコックスプレートなど中距離路線を行く道に分かれる。スプリントが強いはずである。逆に日本馬がメルボルンカップでワンツーをさらったように中長距離路線は手薄なようである。
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