2011/08/01

スプリント雑記3 日本のスプリント路線へ望むこと

スプリント雑記も3回目。「日本と世界のスプリントの現状」、「グローバルスプリントチャレンジ」の続きです。

これまでの述べてきたように、日本のスプリントは香港、オーストラリア、アメリカらに比べてレベルは落ちる。しかし、このままで言いのか?と問いたところで、多くの競馬ファンらは別にここままでいい、と答えそうな気がする。やっぱり日本の中心は中距離路線であるし、そこでナカヤマフェスタが凱旋門賞で2着となったり、ドバイWCでヴィクトワールピサが勝利したりと実績を残している。この路線で結果が出ていれば短距離で水を開けられていても気にならない人も多いと思う。日本の馬達がスプリント路線でも世界で活躍してほしいと願うのは、私のように一部のコアな競馬ファンに限られるとは思う。しかし、ここではどうすれば日本のスプリンターが強くなれるのか少し考えてみたい。

香港、オーストラリア、そしてアメリカでもセン馬ばかりであるが、セン馬は馬の気性を抑えて扱いやすくすること、そして長く走れるようにすることには効果があるとは思うが、馬の能力の絶対値は変わらないと思う。あと香港馬にはサイレントウィットネスの570kgのように巨漢馬が多いイメージもあるが、この馬は例外的で、テイクオーバーターゲットはスプリンターズSで518㎏であったし、これくらいの大型馬なら日本でもいくらでもいる。馬体の大きさの違いは気にするほどでもないと思う。中距離も合わせてトトータルで見れば、日本は香港、オーストラリアに馬の質で負けていることはないので、やはりスプリンターの価値の持ち方、どれだけ限られた生産資源をスプリンター血統に割り振れるか、いかに最初からスプリンターとして育てられるかであろう。

まずはスプリント路線の充実について。JRAとしては決してこの路線を軽視はしてないとは思う。スプリンターズSと高松宮記念の両G1を設立して以降も、徐々に短距離重賞は増えてきた。新潟で直線重賞アイビスサマーダッシュもできたし、サマースプリントシリーズも5つの重賞が揃っている。地方競馬の方でも今年、地方競馬スーパースプリントシリーズというものができた。各地方競馬場で最短のコースを使用したシリーズで、距離は800mから1000mである。これはなかなか面白い試みだと思う。

だが、日本のスプリンターが強くなるためにはまだ足りない。もう一段の充実を望みたい。そのためには2歳と3歳春のスプリント路線の充実である。2歳12月には朝日杯フューチュリティSと阪神ジュベナイルフィリーズがあるし、3歳春にもNHKマイルCがある。しかし、もはやマイル路線とは短距離とは違う。どちらかと言えば中距離に近い路線である。スプリンター向きの馬は無理にマイルを走らず、早くからスプリントに専念した方がいいのである。スプリンターの特性は、1200でも先行して粘り込むようなレースをする馬で適性は見極めやすいと思う。

スプリント路線、そしてダート路線にも言えることだが、JRAはこれまで3歳春までのこれらの路線は充実させてこなかった。スプリント重賞は2歳には複数あるが、3歳春はファルコンS(1200m)、それと桜花賞トライアルであるフィリーズレビュー(1400m)のみである。ダートはユニコーンS一つでそれもダービー後である。これはスプリントやダートの重賞で賞金を上乗せた馬にクラシックには出て欲しくないという意図があるものと思われる。しかし、一昔前までは短距離馬だろうがダート馬だろうが賞金さえクリアしていたら何が何でもダービー、オークスという時代もあったが、最近は賞金はあっても短距離馬やダート馬は出てもどうせ勝てなくて消耗するだけなので、空気を読んで出ない陣営が増えてきた。逆に3歳のスプリント路線が充実すれば、クラシックの枠を心配せずともスプリントの重賞の方に進んでくれるはずである。
オーストラリアの馬達が中距離のクラシックよりも2歳スプリント戦のゴールデンスリッパーSを目標とするように早い時期のスプリンターにとっての目標はあった方がいい。現在はファルコンSのみである3歳スプリント重賞だが、3つにしてスプリント3冠にしてほしい。できれば距離は1000、1200、1400と異なる方が面白い。G1である必要はないと思う。クラシックの時期と重なればスプリンターはそちらに流れ、クラシックの枠にとっても良いことになるはずである。できれば2歳暮れでも牡牝混合の1200mのG1、無理ならG2がほしい。フェアリーSも1600mになってしまったこともあるし。路線が充実してくれば、生産の方でもよりスプリンターを意識した配合が増えてくるはずである。例え上記の重賞改革を行っても、日本が香港やオーストラリアのスプリンター達に層の厚さで敵うことはないのではあるが、それでもトップレベルに育つ馬がポツポツでも出てきてくれればと思う。

日本ではサンデー系の中ではスプリント実績があるフジキセキだが、これがオーストラリアへシャトル種牡馬となったときには、スプリンター種牡馬としては失敗と見なされてしまった。活躍馬がでたがSun Classique (ドバイシーマクラシック)のように中距離馬でスプリンターではなかった。より本格的なスプリント血統が求められているのである。

日本にもたまに良いスプリント血統の種牡馬が入ってきているとは思う。BCスプリント馬スクワートルスクワートなど良いとは思うが、あまり生かしきれていない。ダーレーのザール、(もういなくなったが)ディクタットも良いスピード種牡馬だと思うが、やはり現状では質のよい肌馬は集まらない。前に書いたが、コマンズの導入は画期的なことだと思う。ダーレーの良血の繁殖に多数付けており、現状の日本の層の薄いスプリント路線を変えてくれるかどうか大いに注目している。このコマンズ、500万という種付け料もあり、付けたのはほとんどダーレーで外部はあまり付けていないようである。

世界に通用するかはまた別の話だが、個人的にはファルブラヴは50万まで種付け料が下がったが短距離種牡馬として見たら優秀だと思う。人気は下がっているがアドマイヤコジーンも良いと思うし、これからデビューするものとすればフサイチリシャール、ローレルゲレイロなどはスピードは伝わりやすい印象で短距離種牡馬として注目している。

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